真夜中のクズヂカラ

29歳サラリーマンがリアルに興味のあることについて書いていきます。

【短編】私の部屋

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扉が開く音がした。彼だ。

 

 

いつも決まった時間にやって来るのは、彼の律儀な性格ゆえだろうか。

 

 

それとも何か別の理由があるのだろうか。私には分からないのだけれど、とにかく決まった時間にやって来るのだ。

 

 

私の部屋を訪れるのは彼だけではない。他にも多くの人間が私の元に吸い寄せられるように毎日やって来る。それも、決まった時間に。

 

 

私は、決して軽い女ではない。

むしろ、身持ちが堅い方であると自負している。

 

 

それでも、毎日訪れる客人を招き入れてしまうのは、心の何処かに隙間があるからであろう。

 

 

私はその隙間を客人との他愛もない会話で埋めていた。

 

 

客人のタイプは様々だ。とにかく自分の話ばかりするもの。緊張して話がちぐはぐになるもの。はたまた、私を笑わせようと躍起になって空回りするものもいる。

 

 

稀に小さな客人がやって来る。そんなときには、可愛らしい飴玉を客人に渡すことにしている。

 

 

突然渡される飴玉にやや驚いた表情を見せたあと、すぐに笑顔になる瞬間。私にも母性があったのだと、はたと気付かされる。

 

 

どんな客人であっても話している間だけは他のことを何も考えずに済む。私はその時間が好きだった。

 

 

客人はたいがい30分程度で、何事もなかったかのように帰っていく。

 

 

先程までのあんなに楽しくおしゃべりしていた時間がまるで嘘のようにそそくさと、あるものは逃げるように帰っていく。

 

 

この喪失感だけは何度繰り返しても慣れることはない。

 

 

今日もまたあの音楽が流れ始めた。

客人を迎え入れるとき、そして去っていくときに必ず流れるあの音楽。

 

 

 

ルールル ルルル ルールルー♪

ルールールールー ルールルー♪

ラララ ラーラーラーラー ラーラー♪

 

 

 

「本当にあなたのイグアナのモノマネを見るといつも笑ってしまって。いやー、本当にいろいろな芸をお持ちで感心いたしました。本日のゲストはタモリさんでした。ありがとうございました。」

 

 

ラーラーラーラー♪

 

 

私の名前は徹子。私の部屋は毎日賑やかだ。